高台寺圓徳院歌仙堂 和歌杉天井板修復

歌仙堂の紹介:略。完成新聞報道記事をご参照ください
 
実施期間
令 和元年 6月19日~8月26日

枚数: 36 枚 材質 :杉

現状 ① 板 により、経年のため、 墨字が 薄くなって 判別しづらくなっているもの が あります 。
    ②板により、板そのものが 汚れ により 黒ずんで 、 墨字の判別 が 難しくなってい るものもありま    す。
    ③赤 金 ・青金・雲母 砂子、雲母型 紋の変色 、欠落 が顕著です。

修復作業内容 ① 特殊 液水 洗浄によって、 汚れと黒ずみを軽減し、全体的墨字、 赤金・青金・雲母砂          子、型紋様を以前より 鮮明に させます 。
          ② 第 ① の作業の上に、変色 、欠落 した 赤金・青金・雲母砂子 、雲母型紋を同じ 純           金赤金、青 金、雲母で 部分補修します。 元の 金 、雲母 の輝き と形 に少しでも近付           けます。
          ③ 極薄で判別に苦しい墨字を赤外線写真撮影で可能な限り判読し、墨と天然岩黒を混          合した黒墨で再現します。
      ※ できる限り元の古き趣を守るのは当工房の古文化財に対する基本修復指針です。今回の       修復も同様です。

修復事業体
発注: 宗教法人高台寺 圓徳院

作業修復
(有 )京都佛画研究所 代表絵師 大里宗之
◎日本文化財修復学会正会員
◎文化財保存支援機構専門家登録

天井板の卸、安置:
(有 )豊工務店

統括:
一級建築士事務所 建築意匠設計室 山田雅巳
 

歌仙堂外観
 

修復前の歌仙堂内部
修復作業風景一覧
 

天井板の取り外し作業
 

取り外し作業後の天井
 
 
    
撮影技師との 打ち合わせ
 

赤外線カメラの撮影作業
 

特種洗浄作業後の自然乾燥
 

洗い落とした汚水
 7666

 砂子細工の補修復元作業
 

字復元作業
 

修復前
 

修復前
 経年により、杉板本体が汚れで黒ずんで、砂子細工も変色と欠落があり、主役の墨字の判別も非常に難しくなっている状態である
 
   
赤外線写真  赤外線写真
 高性能の赤外線カメラによる画像処理済の写真で、肉眼で見つらい墨字が見えるようになった。但し、写真にも映らなかった完全に消滅していた字もある  
   
 

修復後
 

修復後

砂子細工を元の仕様に基づいて、修復再現し、墨字を赤外線写真に依拠して、手書きで復元した

 

配置場所を確認しながら、慎重に

天井板を取り付ける

 

天井格子の拭き掃除
.

修復後の見上げ天井全体図
完成報道新聞記事
「京都新聞」夕刊第一面掲載 2019年10月30日

「中外日報」日本最古宗教工芸新聞(周三)2019年11月1日 

「文化時報」2019年11月2日掲載



平成30年度文化庁文化芸術振興費補助金
(文化遺産総合活用推進事業ワークショップ

  第九回 テーマ「佛画の世界」制作・修復・復元
 講師:大里宗之
2018916日於本山 三井寺
           


講演内容要旨

一、 伝承佛画の制作
伝承佛画つまり伝統佛画(垂迹画、道釈画を含む)の概念について、実に定めにくい事なのですが、日本の佛画の流れから見ますと、飛鳥時代の588年に(崇峻天皇元年)百済画工より大陸形式の佛画が伝来し、その後、奈良、平安、鎌倉、室町、江戸及び近世の明治時代までの変遷を経て、世界でも類のない様々な時代特色を有する佛画が存在しています。材質から見ても、土、麻布、絹、木、紙等、画法から し ても密陀絵、彩色、墨画等の 様々な 仕様 が あります。ここで論ずるのは平安初期に確
立した絹本彩色佛画のことです。 今日は昨年 の 暮れに、制作完成した護国寺平成両界曼陀羅図 及び近作立像聖観音図 の実例を通じて、 伝承佛画 の 特有の技法(表裏彩色、表裏金箔、置き上げ金色(かねいろ)、金泥描き、截金など) を画像 にて 紹介したいと思います。
二、 伝承佛画の 修復
当工房が手掛けた古画修復の実例 を紹介して、 古画修復の意義と正しい在り方 について 述べたいと 思います。 そして、 今年 6 月に文化財保存修復学会全国大会(高知)で初めて 発表した 、 わたくしの研究考案した「移染抜き」 ((※釈文参照 という特許性のある独自の古画修復技術 も 紹介 いたします。

「移染抜き」: 古画によく見られる、水漏れ、水害などの原因で表具裂地の色が溶けて本紙に移ってしまった「移染」という色移り現象です。この「移染」の染み本体と通常の古画によくある染み本体との成分は発生過程においても根本的に異なっていま すので、 通常の水としみ抜き薬剤が効きません。そして、古軸の「移染」の場合は、多く本紙を通して、古軸の裏の総裏紙まで深く滲透し、中々除去するのに困難を極めるので、多くの作業者がそのまま放置するか、或は色塗布によって処置されます。しかし、表の色塗布は原画の画風を損なうので、お薦めできません。そして、その作業は根本的にその移染の汚れは取れていないので、年月の経過によって、その色塗布が退色し、再び現れてくるはずです。
「移染抜き」は 修復業界で常に未解決の難題でした。
三、 伝承佛画の 復元
古画復元とは、元の古画と同じ技法、素材、寸法などで改めて模写制作し、往時の風貌を再現することです。復元作業は、古画の保存・普及に大きな役割を果たしています。当研究所では伝承技法によって、各 時代の軸物・巻物・壁画・襖絵・屏風絵を復元しております。 今日は威徳院室町時代の古涅槃図の復元作業の紹介を通じて、文化財伝承佛画の復元の本質の定義、過程を解説させて頂きたいと思います。
四、 中国本土の最新佛教美術現状の 略説
① 今年の三月に現地視察した 2008 年発見した 佛頭頂舎利 を安置する南京佛頂宮と大報恩寺
の 荘厳佛教美術の 略述 報告 。
② 近年、注目を浴びてい る 中国国内で唯一残存の北宋時代の山西高平開花寺の佛壁画 の 略述 紹介 。
              
       
有限会社 京都佛画研究所 代表絵師 大里宗之
講演風景



中外日報報道記事


大里宗之「佛教美術」トークサロン 講師

 サロン風景



 大里宗之KBS京都放送局新春対談ラジオ生放送

2018年2月11日、当工房代表絵師大里宗之がKBS京都放送局で京都経済界、文化芸術界、スポーツ界人士の「新春対談」の生出演を出席しました。司会:KBS名司会、武部 宏
対談後の記念写真